
鹿児島県の名所として知られる桜島は、1日に7色にも山肌を変える優美な表情と、時折空高く噴煙を上げる姿から、自然が創り出した芸術作品といわれています。
太古の昔、約1万3千年前から生き続けている桜島は、歴史に記されているだけでも文明、安永、大正、昭和と大噴火を繰り返してきました。なかでも大正3年の大噴火では、噴煙が約8000mも上昇し、約1カ月にわたり30億トンもの溶岩が流出。このときの溶岩流が幅400mの海峡を埋め尽くし、対岸の大隈半島と陸続きになったのです。
その昔、島であった桜島の名物には、2つのユニークな世界一があります。ギネスブックにも登録されている世界一大きな「桜島大根」と世界一小さな「桜島小みかん」です。
今月は、大きなもので1本の重さが約30kgもあり、胴回りが1.4mにも及ぶ「桜島大根」の故郷、鹿児島県桜島町を訪ねました。

明治には35kg、大正には45kgのものが採れたという記録がある桜島大根ですが、今では15kg前後が標準です。もともと細長い形だったのが、200年の時の流れとともに今のように変化したようです。
桜島大根の起源は諸説がありますが、巨大な大根が桜島の火山灰土壌のみにできるのは「遺伝学会の不思議」とされ、国際遺伝学会でも世界の学者の注目を集めました。現在、肥大の理由は、秋から冬にかけての温暖な気候、耕土が深く膨軟な土で、軽石混じりの土性にあるといわれています。
8月下旬から9月上旬、1カ所に15~20粒の種を蒔き、5~6カ月間生育させます。3回の間引きで1株立てとしますが、どの1本を残すかで良い大根かが決まるため、長年の習熟した経験が必要です。
桜島大根の旬は12月末から2月。毎年2月に行われる「桜島カンパチ&ブリ大根まつり」では「世界一桜島大根コンテスト」が実施され、平成14年の第二回コンテストでは、重さ29.6kgがチャンピオンになり、ギネスブックに記録が更新されました。

桜島大根といえば、鹿児島産名物の薩摩漬けが有名。
大根を輪切りにして塩漬けにし、味噌や酒粕に漬けて仕上げるものです。
胴回りがやわらかく、みずみずしく、甘みがあるのが特長の桜島大根は、漬物だけでなく、生食でも煮物でもいい味を出します。大きいから、味も大味だと思っていると大間違い。大きいほど肉質がきめ細かく、そのおいしさも格別です。桜島大根で作る大根おろしは水分たっぷり、煮込んでも煮崩れせず、おでん、ふろふき、煮しめにもよく合い、味噌汁にもなじみます。煮込んだ大根が、口の中でとろけるおいしさと甘さは驚くほどです。
栄養面では普通の大根と同様、桜島大根にもでんぷんの消化を助けるジアスターゼや、胃液の分泌を促進する辛味成分などが含まれ、胃腸の調子を整える効果があります。そのほかビタミンCが豊富で、葉にはビタミンAが多く含まれています。
「すずしろ」とも呼ばれる大根は春の七草の1つで、年末年始の暴飲暴食で疲れた胃腸にもぴったりの食材。ちなみに「大根役者」とは、大根がどんなに食べても食あたりしない(当たり役がない)ことが由来となっているとか…。大根がおいしくなるこの季節に、たっぷりと大根料理を堪能しましょう。
取材協力:桜島町役場