
岡山県の人々が鰆(サワラ)好きで有名なのをご存知ですか?
漁獲量No.1の長崎県をはじめ全国でとれるサワラですが、その消費量は岡山県が全国の約3割を占め日本一。市場の取扱高もトップで、全国で水揚げされた多くが岡山の市場に集まってきます。その歴史は江戸時代にまでさかのぼり、八代将軍吉宗の時代の備前国・備中国の領内産物帳に「当地では、さわらなる魚が豊かである」と記されています。
“旨いサワラは岡山に集まる”というのも納得できるほど、岡山にはサワラ料理が数多くあります。
今回訪れた岡山県日生町は、雄大な山々を背に湾を描く本土と風光明媚な瀬戸内海に浮かぶ大小13の 日生諸島からなる漁師町。古くから漁業と海運業で栄え、春先にはサワラがよくとれることで知られていました。「日生千軒漁師町」と謳われたこの町を歩くと、潮の香りがいっぱいに漂い、日生港では豊富な魚介類が毎日水揚げされています。

瀬戸内海地方では、昔から“サワラが来ないと春が来ない”と言われてきました。魚偏に春をあてた「鰆」という字も、産卵期の3~5月にサワラが瀬戸内海に群れをなして出現すると“春を知る”ということから作られた漢字だとか…。
サワラの語源は「狭腹」。腹がやせていてスマートなのでそう呼ばれるようになったようです。体側に多数の青褐色の斑紋があるのが特徴の出世魚の一種で、成魚の体長は約1m、重さは2~3kgにも及びます。瀬戸内地方では1m以上をサワラ、それ以下の幼魚を狭腰(サゴシ)と呼んでいます。
瀬戸内地方では、豊漁となる春の産卵期のものを旬としていますが、近年、サワラの漁獲量は激減し、春を告げる魚ではなくなりつつあります。また現在では全国的に、脂ののった1~2月頃のサワラを「寒鰆」といって珍重します。とはいえ、身がやわらかで傷みやすいサワラを刺身で食べるのは、岡山県以外ではめったに見られません。新鮮なサワラが日生港をはじめ岡山県の市場に多く集まる理由もそこにあるのです。日本各地でとれるにもかかわらず、岡山ほどサワラを好む地域は他にありません。

これからの季節、脂ののった寒サワラと産卵期のサワラ、どちらも楽しみたいもの。岡山を訪れたら、日生町で今なお続く伝統食、鉄鍋で砂糖の効いた割り下を熱し、刺身状にきったサワラを一枚ずつ入れ、瞬間、表面だけを炒りつけてあつあつを食べる「炒り焼き」や、酢で〆たサワラと細く糸状に切ったたくあんを混ぜた「こうこずし」は、ぜひ一度味わってみたいもの。そのほか、岡山名物サワラの「ばらずし」もおすすめです。
サワラは良質のたんぱく質やビタミン、鉄分、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが豊富です。西京漬けに代表されるように味噌と良く合い、栄養の相乗効果ももたらします。中高年の方にもおすすめの一品です。
また、カリウムが100g中490mgと人参やニラにもひけをとりません。イワシやサバを貪欲に食べて成長するサワラは、DHAやEPA、タウリンなども豊富。
写真提供:日生町役場産業振興課、(株)岡山県水