
毎年、春になると町のあちこちで黄色いじゅうたんを見かけます。「菜の花」は、野菜の旬で季節を実感することが少なくなってきた今日この頃にあり、春を教えてくれる数少ない食材の一つです。
菜の花の正式和名は「アブラナ」ですが、主に油を採るための「菜種」を指し、「花菜(ハナナ)」は観賞用、「菜花(ナバナ)」は食用の呼び方となっているようです。
観賞用の菜の花と食用の菜の花は、どちらも菜の花ですが、用途に合わせて品種が分かれます。観賞用は茎が太くなく、枝分かれせず伸びがよく、食用は枝分かれしてよく育つ品種です。
千葉県は食用菜の花「菜花(ナバナ)」のメッカ。早春に南房総で見られる黄色い菜の花畑は、ほとんどが収穫の終わった後の菜花の花です。今回は「菜の花」が県の花でもある千葉県の安房地域で、特産品「菜花」を取材しました。

千葉県の菜花の生産量は全国1位。その内のおよそ90%が南房総の安房地域で生産されています。この地区の約2割にあたる200戸の農家で栽培され、その量は年間約1500トン。全国の半分以上を占めています。
安房地域の菜花の多くは、秋に稲刈りが終わった水田(裏作)に肥料をやり、土を耕してから“うね”を作り、直接、種をまきます。早いものでは種まきから2カ月ほどで収穫されます。冬でも暖かいこの地域では、1月から3月にかけて食用菜花の出荷がピークに。日中に摘み取られた15~20cmほどの菜花は、つぼみの部分を揃えて紙で包み出荷されます。
近年では、直接摘み取りができる「菜花摘み」なども楽しめる場所が増えました。「緑の葉の中から緑のつぼみを見つけるので、目が慣れないとちょっと難しい作業。つぼみを見つけたときの嬉しさ、そのつぼみをポキっと折る(摘む)感覚がお客様は楽しいようです」(岡本農園・岡本秀和さん)。
菜の花が咲きほこる3月には「南房総白浜菜の花マラソン」なども開催されます。一足早い春の味を訪ねる旅もいいですね。

栄養的にも優れている菜花は、風邪をひきやすい寒い季節にはぴったりの食材です。
β-カロテンを100g中2200IUと豊富に含み、冬採りのホウレン草と比較するとカルシウムは約3倍、ビタミンCは生では約2倍に。その他、ビタミンB1、B2、ナイアシン、食物繊維などもバランスよく含みます。
さっとゆでれば栄養素の損失も少なく、お浸しやからし和え、軽い漬物、または洋風のパスタやちらし寿司、グラタンなどでもおいしくいただけます。「少し花の咲いた状態で天ぷらにすると、綺麗ですよ」(岡本さん)。美容と健康のためにも、真冬にちょっとほろ苦い春の味が楽しめる菜花で、一足早い春を感じてみませんか?
写真資料提供:安房農業協同組合、岡本農園(0470-36-2229)