
特有の香りとほのかな甘みが嬉しい初夏の味覚“そら豆”は、青空に向かって伸びていく姿から「空豆」と名付けられました。
日本には、8世紀頃インドの僧により伝えられたともいわれ、若いうちに採る青果用と、完熟したものを採る乾燥豆用があります。現在、流通している品種は大型で大粒の「一寸そら豆」が主流。一粒が約3cm(一寸)なので、このような名前が付いています。
そら豆は“おいしいのは3日だけ”といわれるほど、鮮度が落ちるのが早い野菜です。九州から北海道まで、全国各地で栽培されているそら豆は露地栽培が市場を占めているため、3月ぐらいから日本列島を北上しながら、10月頃まで産地リレーしていきます。
今月は初夏に旬を迎え、特に大阪市場で人気の『若狭一寸豆』を福井県小浜市で取材しました。

福井県(昔の若狭と越前)は、北陸の難所として知られる木の芽峠を境とし、嶺南と嶺北に区分されます。若狭地域は嶺南地域の最も西端に位置し、小浜市、上中町、名田庄村、高浜町および大飯町の5つの市町村から構成されます。
小浜港は京の都から最も近い日本海側の良港であり、古来、大陸文化を受け入れる日本の玄関口として栄え、数多くの国宝級文化財に恵まれ、古くから伝わる祭りや民俗行事も残っています。
また、小浜市は、朝廷の食を支えてきた「御食国」の歴史があります。寒流と暖流が合流する若狭湾沖は多彩な魚介類の宝庫。背後に迫る山地と清らかな川が、高品質の山の幸をもたらしてきました。
小浜市をはじめ若狭地域で収穫される『若狭一寸豆』は、初夏の味として5月下旬~6月中旬にかけて出荷されます。前年秋に定植され、厳しい冬を越して出荷される『若狭一寸豆』の味は格別です。

乾燥していない生のそら豆は、野菜として扱われ、水分が少ない分だけ各種栄養素が豊富です。特に、良質なタンパク質が10%以上も含まれるのは、数ある野菜の中でも特筆もの。そのほかビタミンやミネラルも豊富です。特に、B1・B2やCなどが多く含まれ、鉄分の宝庫といわれるほうれん草とほぼ同量の鉄分を含みます(表1)。
そら豆の黒いつめの部分は“お歯黒”と呼ばれ、実が熟れすぎるとこの部分が黒くなり、味が落ちます。また、鮮度が命のそら豆は、購入後、すぐに食べること。冷蔵庫で保存するより、硬めにゆでて冷凍保存するとおいしさが長持ちします。ゆでたてを食べるのはもちろん、下ゆでしてスープや揚げ物、煮物にしても美味。緑のそら豆で、初夏の味を堪能しましょう。
写真資料提供:福井県嶺南振興局、小浜市役所