
瀬戸内海に浮かぶ大小9つの島からなる広島県蒲刈町は、優美な弧を描いて広がる砂浜、岬が織りなす美しい海岸線、四季折々の表情を見せるみかん畑など、美しい自然あふれる瀬戸内海の楽園です。
町内には3万年前の後期石器時代から縄文時代、弥生時代、古墳時代を経て各時代の遺跡が約40カ所あり、かなり早い時期に人々の生活が始まり、漁労・製塩などの海浜生産活動による人の定住があったと考えられています。
今回は万葉集などで詠まれた古代製法でつくる天然塩“藻塩”を求め、蒲刈町を取材しました。


四方を海に囲まれた日本の沿岸には、海水から塩をとるためのさまざまな技法が伝えられています。その中の1つ「藻塩焼き」は、塩田による塩づくりが始まる以前に行われていた海藻を使った製塩法で、いわゆる日本における塩づくりの原点。古代の和歌にも数多く詠まれていますが、その詳しい製塩方法はわかっていませんでした。
1984年、「県民の浜」造成工事中に発見された古墳時代の製塩土器が、蒲刈町の藻塩研究のきっかけになり「藻塩の会」が発足しました。その後、10年余りの試行錯誤を繰り返し、海水にひたしたホンダワラ(海藻)を乾かし、それを焼いた灰をさらに海水でこし、かん水(濃い塩水)をつくり土器で煮詰めて塩をとるという製塩方法を確立。古代人の知恵から生まれた天然塩を再現しました。ほとんどの作業が手作業で行われるため、1日にできる量はわずかに200kgとのこと。
現在、蒲刈町では古代の藻塩づくりが体験できる「ワクワク藻塩体験」を行っています。

岩塩がほとんど産出されない日本での製塩の技術は重要でした。海水を自然に干上がらせる方法から始まり、土器製塩、藻塩焼き、塩田による製塩、国内主流となるイオン交換膜法へと続いたのです。
藻塩は、ホンダワラの成分の影響から薄い茶色で、海藻の成分のヨードとミネラルが豊富で、自然の旨みがあります。最近では、藻塩だけでなく天日塩、平釜塩、自然海塩加工など、いろいろなタイプの塩が販売され、海外の岩塩も輸入されるようになりました。味や形状もさまざまで、料理によって選ぶ楽しさもあります。
また、塩分をとった後の海水を凝縮した“にがり”も話題です。マグネシウムをはじめ、何十種類もの微量ミネラルを豊富に含むため、少量でミネラル補給ができ、料理にコクと旨味を出すといわれています。
ミネラルは私たちの体に欠かせないものですが、塩やにがりの過剰摂取は体内のミネラルバランスを崩すことに。料理に合わせて、適量を上手に利用してみましょう。
写真提供:蒲刈町役場産業観光課