
夏の土用の頃は暑さが厳しいため、昔から「精のつくもの」を食べる習慣があり、土用蜆(しじみ)、土用餅などの言葉が今でも残っています。うなぎは奈良時代頃から、夏のスタミナ源として知られ、万葉集の中でも歌われています。「石麻呂にわれ物申す夏痩せによしといふものぞ鰻(むなぎ)とりめせ」(大伴家持)現在のように、『土用の丑の日』にうなぎを食べるようになったのは江戸時代。万能学者である平賀源内が、”夏場にうなぎが売れない“とうなぎ屋に相談され、「本日、土用丑の日」と張り出したところ、大繁盛したのが始まりとされています。

福岡県柳川市は、“北原白秋の故郷”であり、多くの文人達が愛した歴史情緒あふれる城下町。古くから天然うなぎ「星あお」の名産地としても知られてきました。
今では、柳川の天然うなぎを食べることはままならなくなりましたが、独特の焼き方と秘伝のタレで蒸し上げる名物料理『うなぎのせいろ蒸し』は健在です。
今回は、1615年に考案した初代の味を受け継ぐ、うなぎのせいろ蒸しの元祖「本吉屋」9代目・本吉幸雄氏にお話を伺いました。
「天然うなぎの中でも、柳川で捕れるうなぎは『あお』と呼ばれ、非常に珍重されてきました。特に、体側面に小さな星が並ぶ『星あお』は、幻のうなぎとされています。
現在では、日本で食されているうなぎの99%が養殖もの。柳川でも養殖技術の向上とともに、味がよく、栄養的にも天然ものに負けない養殖うなぎが主流となりました。天然うなぎは、養殖ものよりもさっぱりとした味わいです。
柳川で消費されるうなぎの量は、年間100万匹以上。その霊を供養し、感謝の意を込めて毎年、供養祭が行われています」(本吉氏)。
水郷の町・柳川は、『川下り』も有名です。市街を巡る掘割の総延長は実に470キロ。しだれ柳が緑の影を落とし、川岸には四季折々の花が咲く掘割をどんこ船でめぐる川下り。詩情豊かな柳川の歴史と文化を探訪するゆったりとした時間、水と緑のある景観は人の心を静め、包み込まれるような安堵感を与えてくれるでしょう。

うなぎの稚魚(レプトセファルス)は、日本から南へ2000キロ離れたマリアナ諸島で生まれた後、海流に流され約6カ月をかけて日本沿岸にやってきます。稚魚は「シラスウナギ」→「クロコ」→「成鰻」と成長しますが、その生態には謎が多く、どのように産卵、孵化しているかは解明されていません。
養殖うなぎの歴史は明治12年頃から始まります。卵からではなく、すべて海や河口で天然の「シラスウナギ」を捕り、池などに入れて育てます。一言で養殖といっても、その方法は多様で、生産者により味も変化します。養殖うなぎのおいしさの決め手は、『安全で良い餌』と『きれいな水』。柳川のうなぎがおいしい理由も、まさにそこにあるようです。

暑さで食欲が減退しがちな夏のスタミナ源として、良質なタンパク質を含むうなぎは最適です。
左の表1のように豊富なビタミンAをはじめ、ビタミンB1、B2、D、Eなどの含有量も多く、カルシウム、亜鉛、鉄などのミネラルも高水準に含みます。さらに、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の含有量も青魚に負けません。また、うなぎの皮には、健康なお肌に欠かせないコラーゲンもたっぷり含まれています。
うなぎに不足するビタミンCと食物繊維を緑黄色野菜や豆類などで補えば、栄養満点の献立です。
この夏は、“うなぎパワー”で元気いっぱいに過ごしましょう。
写真提供/柳川観光協会、元祖「本吉屋」(0944-72-6155)