
日本海の暖流と寒流が複雑に流れ込む若狭湾の沖合は、古来より“海の宝庫”といわれる好漁場。そこで育ち、小浜港に水揚げされる魚介類は、「若狭もの」として京の都では特に珍重されてきました。なかでも「若狭ぐじ」は、鯖やかれいと並ぶ代表的食材。港でひと塩することで、京に運ばれる間に身が締まり、ほど良い味に仕上がっていたそうです。
「若狭ぐじ」は、正確には「アカアマダイ」といい、スズキ目アマダイ科に属する魚で、水深五十~百数十メートルの海底でエビやカニ、イカなどを食べて育ちます。アマダイの名は、身肉に甘味があることに由来しますが、特に若狭湾沖のアカアマダイは良質の餌を食べて育つため、大型で風味豊かなのが特長。その上品な甘さと香りは、「タイ以上」ともいわれています。

今なお京料理に欠かせない高級食材ですが、その高級たる所以は、身のおいしさに加え、優雅な姿形にあります。ほんのりと赤みがかった色に輝く張りのある魚体、きめ細やかな鱗、角張った頭と愛嬌のある表情など、料理の主役にふさわしい気品が漂います。
その美しく柔らかな身を傷つけないように、若狭湾では、網などを避けて1本の縄をたぐるように引き寄せる「底延縄」という漁法を行っています。そこで獲れた大型のアカアマダイの中でも、鮮度が良く、姿形が美しいものだけが「若狭ぐじ」の名で出荷されています。漁は通年行われていますが、特に8月は身に赤みが増して味が良くなる最漁期。食通をも納得させる旬の「若狭ぐじ」をぜひ味わってみたいものです。

代表的な調理法としては、背開きにして鱗を落とさずにそのまま焼き上げる「若狭焼き」が有名です。絶妙の火加減で焼き上げられた香ばしい鱗と、ふっくらとして上品な味わいの身とのハーモニーは格別。京では「若狭焼き」の良し悪しが板前の腕の目安とされるほど伝統のある料理です。
また、お刺身や昆布じめ、味噌漬けや西京漬け、蒸し物、揚げ物など、多彩に調理できるところも大きな魅力。栄養的にも高タンパクで低カロリー、頭や皮にはゼラチン質を多く含むヘルシーな食材です。淡泊で香りの良い身は、洋風のムニエルやオーブンでグリルしても大変おいしく、キリッとやした白ワインによく合います。

若狭の中心・小浜市は「御食国」の名に相応しく、食材に関する祭りも数多く存在します。なかでも、殺生を戒め、捕らえられた魚や鳥を、池や海、山野に放つ儀式からその名がついたといわれる「放生祭」は、300年以上の歴史を誇る若狭最大の秋祭り。大太鼓や山車、獅子舞、神楽などの神事芸能が披露され、市内は豪華絢爛な賑わいを見せます。
期間:2007年9月15日(土)・16日(日)
●お問い合わせ:若狭おばま観光協会 0770-53-1111
取材協力/福井県東京事務所、福井県農林水産部販売開拓課
写真提供/福井県漁業協同組合連合会