四季折々の野菜や山菜などを活用し、
心と体を養う精進料理。
その調理法には「もののいのちを活かす」
知恵がつまっています。
「木の芽料理」は春を代表する精進料理の一つ。
若葉が放つ鮮烈な風味と生命力を
上手にいただく工夫について、京都・嵯峨野の
竹之御所流精進料理を受け継ぐ
三光院住職・星野香栄禅尼に
教えていただきました。

山椒は、英語で「ジャパニーズ・ペッパー」と呼ばれるように、日本に古くから伝わる香辛料の一つ。各地の山野に自生し、芽や葉、花、実は、その生育の季節に応じて、料理の風味づけや薬味として利用されてきました。
とりわけ「木の芽」と呼ばれる若芽は、その時々の旬を大切にする精進料理において、春に欠かせない大切な食材です。桜が終わるころ、三光院では、裏庭の山椒の木に芽吹いた若葉を丁寧に摘み、白みそと合わせて「木の芽みそ」を作ります。それは、清々しい香りあふれる"春の精"のような爽快な風味。和え物や田楽などの「木の芽料理」に使い、この季節ならではの大地の恵みを味わいます。

「木の芽」と特に相性が良い「たけのこ」は、味だけでなく、旬の時期もピタリと重なります。いちばん美味しいのは土から顔を出す前に朝掘りした若たけのこ。ただ、土中では成長の具合が見えないため、掘るタイミングが難しいのですが、三光院の竹やぶで掘る時は、境内の「木の芽」が若葉の形になる時が掘り時のサイン。そして、若葉がなくなるころ、「たけのこ」の旬も終わるそうです。
大地が結ぶ不思議な縁というほかはありませんが、私たちも自然の一部。そうした自然の恵みを慈しみ、"その時をありがたくいただく心"こそ、すこやかに生きるための知恵。実際に「木の芽」の香りや「たけのこ」のえぐみに含まれる成分には、冬に鈍った心身の働きを活性化してくれる作用があることが分かっています。大地がくれる旬の恵みをいただくことは、その季節の健康を養うことでもあります。
素材の持つちからを活かし、無駄なく美味しく、体を元気にしてくれる禅寺の精進料理。春を呼ぶ「木の芽料理」を、ご家庭でも味わってみませんか。