秋田県横手盆地の北部に伝承される
お盆のご行事食「赤もの漬け」。
赤じそから出る赤みが全体になじんで
『赤ずし』『盆ずし』とも呼ばれます。
さわやかな風味は
食欲が落ちる時期にも食べやすく、
その赤い色には、盛夏を乗り切るための
自然の恵みがちりばめられています。

「赤もの漬け」は、酢を使わずに作る珍しいおすし。みょうがの葉を敷いた木桶に、もち米のご飯、きゅうりの漬物の輪切り、赤じその葉、塩などをふり入れ、これを繰り返して何層かに重ね、落としぶたの上に重石をのせて漬け込むと、1~2日で程よく発酵して食べごろになります。
さっぱりとした味わいはお酒とも相性が良く、暑い日にもうれしい夏のご馳走です。郷土の伝統食に造詣が深い斎藤亮子さんのお話では、「昔からこの辺り(大仙市)の山間部に伝わるお盆料理で、精霊棚に供えたあと、お客様にふるまいます。家族も食べますから、毎年お盆前には1升の米を炊き、大きな木樽に漬け込みます」とのこと。

この行事食で何よりも注目されるのは、天然の色素成分や、発酵という自然のちからを上手に利用した、実に機能的なスローフードであるという点。赤じそからご飯に移る赤色は、アントシアニンです。
また、きゅうりの漬物による乳酸菌は、雑菌の増殖を防いだり、体内の健康を保ちます。さらに、さわやかな風味を持つ梅酢と赤じそは、味の面でも衛生面でも、まさに鬼に金棒の組み合わせ。
「身近な材料ばかりですが、米は炭水化物、赤じそはカロテンやビタミンC、カリウムなどが豊富。枝豆には植物性タンパク質やビタミンB1、ビタミンCが多く、栄養的にもバランスの良い料理です」(斎藤さん)

秋田の風土と先人たちの知恵が生み出した伝統料理ですが、近年は作る人が少なくなっているようです。しかし、夏を元気に過ごすための優れた健康食として、ぜひ見直したい料理の一つ。作り方も簡単ですから、この夏、ご家庭で作ってみませんか。