江戸の昔から庶民に親しまれてきた蕎麦。
粉の挽き方や配合によって、
香りや味もいろいろです。
中でも種皮ごと挽いた粉で打つ、
いわゆる田舎蕎麦は種皮や胚芽の栄養成分が
すべて含まれていることから、
ヘルシーな自然食品としても注目されています。
年の瀬の慌しさを乗り切る手軽な伝統食で、
来年も皆さまの健康と幸せが長く続きますように。

蕎麦は生命力が強く、山間部や寒い地域など、どんな土地でも収穫できることから、すでに奈良時代には救荒作物として栽培されていました。
穀物の中で特に栄養価が高く、保存性も高い蕎麦粉は、精進を旨とする修行僧にとっても貴重な栄養源で、昔から山伏修行や千日行の時には、袋に包んで携帯し、水に溶いて食したといいます。
そのころの蕎麦の食べ方は、まだ現代のような細長く切った麺(蕎麦切り)ではなく、一般の人々の間でも、蕎麦粉をお湯で練った「蕎麦がき」が普通で、蕎麦切りが広がったのは江戸時代の中期以降です。
やがて蕎麦切りが盛んになると、寺では僧侶が打った「寺方蕎麦」が檀家のもてなしや、貧民救済などに広く振る舞われるようになりました。これが、各地の門前町に多く見られる「門前蕎麦」のきっかけだったようです。

蕎麦が栄養的に優れている大きな理由は、その胚芽にあります。胚芽は、ビタミンB1・B2などを豊富に含む大切な部分ですが、米などの穀類は、胚芽が実の表面に付着しているため、精米などの過程で貴重な部分を失ってしまいます。
一方、蕎麦の胚芽は実の中心に入っているので、粉に挽いた時にも、胚芽の成分がそっくりそのまま残されています。特に実を丸ごと挽いた田舎蕎麦は、風味も強く栄養価も最も高い蕎麦といえます。
また、蕎麦には注目のルチンやカテキンなどの成分も含まれています。温かいものから冷たいもの、いろいろな食べ方を楽しみながら、健康に役立てましょう。

蕎麦の収穫は晩夏と晩秋の2回。特に香りや味が良い9~10月の秋蕎麦は、昔から「新蕎麦」と呼ばれて蕎麦通に好まれてきました。
そして、大晦日にいただく年越しの蕎麦は、古より続く行事食。その由来については、家運や寿命などが長くのびる、旧年の厄災や借金をきれいに断ち切る、など諸説あるようです。
食べ方や具なども地域によって様々ですが、ご家族の健康と長寿の願いを込めて、今年の大晦日にも美味しくいただきたいものです。どうぞ皆さま、良いお年をお迎えください。