江戸っ子が競って食べたという初鰹。
代表的な料理といえば「鰹のたたき」で、
発祥の地にちなみ「土佐造り」とも呼ばれます。
表面だけをさっと焼き上げる独特な手法は、
より安全に、美味しく食べるための知恵。
にんにくなどのスタミナ野菜を
たっぷり添えていただく豪快な料理には、
夏を元気に迎える健康パワーが詰まっています。

一本釣り漁法で知られる高知県土佐湾沖。春と秋には回遊してきた鰹漁で賑わいます。
4~5月の春鰹はさっぱりとした風味と檜のような香りが特徴。江戸の昔から庶民に人気が高く、初物を食べると寿命が延びるともいわれていたようです。ただ、鰹は鮮度が落ちやすいといわれていますので、当時は刺し身で食中毒になる人が多く、生食が禁止されていました。それでも生の鰹を食べたい土佐の人々は、役人の目をごまかすために表面だけを炙り、焼き魚に見せかけて食べたのが「鰹のたたき」の始まりといわれています。
ほかにも、漁師が船上で炙って塩や酢をたたきつけて食べた、家のたたき(土間)でワラで焼いたなど、その起源には諸説あるようですが、いずれにしても窮余の策から生まれたこの食べ方は、実に理にかなった調理法であったのです。

火力の強いワラの炎で炙ることで、表面が殺菌されるとともに、硬い皮が香ばしく燻されて、独特の風味が生まれます。また熱によって、皮と身との間にある脂が全体に程良くまわり、コクのある美味しさになります。
鰹は栄養的にも優れた魚で、良質のタンパク質、ビタミンB12や鉄分、ビタミンDやビタミンB1、EPAやDHAなど、健康に大切な栄養成分が多く含まれています。
さらに、薬味になるにんにくや玉ねぎに含まれるにおい成分にも、健康に大切な栄養成分が含まれていて、夏を待つ体にはうってつけの料理といえるでしょう。
見た目も豪爽。黒潮の恵みと土佐の人々の知恵が生んだ「鰹のたたき」を味わってみませんか。