夏野菜を小さく刻んで、
しょうゆをかけていただく、
山形県・内陸地方の郷土料理「だし」。
その清涼な風味とシャキシャキとした食感は、
暑さで食欲の落ちる夏場にはもってこい。
その土地に根ざし、各家庭で受け継がれてきた
「だし」の魅力について、ご紹介します。

「みょうがが出たら、だしを作る」
山形の内陸地方で昔から言い伝えられていることばです。山形ではみょうがが出回り始めるころ、きゅうり、なす、青じそ、長ねぎなど、夏の露地物野菜が出そろいます。これらをみじん切りにして、しょうゆと削りかつおぶしで味付けした料理が「だし」です。
そのままおかずにしたり、ご飯にかけて食べるのが一般的ですが、冷奴に盛ったり、そうめんや納豆の薬味にしても美味しくいただけます。地域や家庭によって、乾燥させた昆布を刻んだなっとう昆布やおくら、油揚げのみじん切りを加えるところもあります。
発祥や名前の由来について正確なことは分かっていませんが、今も昔も食卓に欠かせない家庭の味。台所でトントンと野菜を刻む音は、初夏を告げる山形の風物詩です。

身近な材料で簡単にできる「だし」は、素朴ですが、夏の体に補給したいビタミンやミネラルが豊富な料理です。ちょうどこの季節、農家は田んぼの草取り作業でおかず作りの時間も惜しいほどの忙しさ。また、暑さのために食欲も落ちやすくなります。
そんな時にパッと作れ、涼しげで、ごはんが進む「だし」は、まさにうってつけの一品。様々な夏野菜に含まれるビタミン・ミネラル類がバランス良く摂れ、長ねぎやしょうがの香味成分には、新陳代謝を活発にする働きがあります。「だし」は、夏を元気に乗り切るため、田畑に生きる先人が残してくれた郷土食です。

近年は全国的に知られるようになり、デパートなどで「だし」を目にする機会も増えてきました。
ただ、市販の「だし」は、刻んだ野菜を浅漬けにしたタイプの商品が多いようですが、伝統食の「だし」はあくまでも生野菜。本来は、新鮮な野菜のちからをそのままいただく家庭料理です。
暑くなるこれからの季節、食が進まない時に、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか。