海老芋と棒鱈の炊き合わせは、
京都では昔からお馴染みのご馳走。
北海の乾物と京野菜が互いの持ち味を相乗させた
独特の美味しさは、まさに“出会いもん”の妙味。
京都の知恵と技術が生んだこのお料理の魅力を、
京町家の食文化に詳しい
杉本節子先生に伺いました。

棒鱈(ぼうだら)とは、真鱈を三枚におろし塩をしない状態で固く乾燥させた乾物のこと。北海道の名産品ですが、最大の消費地は京都。江戸時代には北前船で運ばれてきました。
「京都は海から遠く、かつては鮮魚に恵まれん土地でした。そうした歴史的な背景から、棒鱈に代表される魚介の乾物を使うた料理は、京都らしい調理法として今日まで伝えられてきました。中でも、京都人に身近な伝統野菜の海老芋と棒鱈の炊き合わせは、冬を代表するご馳走の定番です。」(杉本先生)

かちんかちんに乾し上げた棒鱈は、炊く前に1週間から10日ほどかけて水でじっくり戻します。戻し水が生臭いにおいを放ちますが、それもほっくりとした美味しさを、家族やお客様に味わってほしいからこそのひと手間です。
師走になると乾物屋さんの店先に積まれる棒鱈は、京都の冬の風物詩。近年は、現代の台所事情を考慮し、水戻しした棒鱈を使いやすい大きさに切って売るお店もあります。

海老芋と戻した棒鱈は、たっぷりの煮汁でゆるゆると煮含ませます。棒鱈から出る膠(にかわ)質が海老芋の煮崩れを防ぎ、海老芋から出る灰汁(あく)には棒鱈を柔らかくする性質があり、その相乗効果がほかにない絶妙の滋味を醸し出してくれます。
「炊いて冷まし、また炊いて冷ますことを数日繰り返しながら味を含ませるのが昔ながらの作り方。文字通り棒のように固く乾し上げられた魚は、このくらいじっくりと気長に構えて調理してこそ、封じ込められた奥深い味わいに出会えるものやと思います。」(杉本先生)
新しい年の良き出会いを願い、「海老芋と棒鱈の炊き合わせ」を、食卓に加えてみませんか。