
ふっくら丸く、存在感のある姿で、
“なすの女王”とも呼ばれる賀茂なすは、
京都の食文化のもとで育まれた
伝統野菜の一つです。
これから夏にかけて、気温の高まりとともに
出荷がピークを迎える賀茂なす、
その独特なもちっとした食感を
味わってみませんか。

平安のころから都が置かれていた京都では、そこで暮らす多くの人々の食を支えるために、野菜の栽培が盛んに行われてきました。山に囲まれた盆地特有の気候も野菜作りに適していたため、宮廷での有職(ゆうそく)料理や、寺社の精進料理などの発達とともに、美味しい野菜が食生活に根を下ろしていきました。
賀茂なすも100年ほど前から栽培されてきた京都の伝統野菜。現在では、地元の優れた農産物に与えられる「京のブランド産品」の一つとして認定されています。

賀茂なすは、ふっくらと丸い大きな実が特徴です。実はよく締まっているため、煮炊きしても形が崩れにくく、食べると独特のもちっとした食感があります。
栄養成分はほかのなすよりもビタミンCで約2倍、カリウムは約1.2倍多く含まれています。近年では、いわゆる“なす紺”と呼ばれる、紫よりも深く黒光りするような皮の色素に、ポリフェノールが含まれ、若々しさを保つ働きがあることも分かってきました。

昔から、なすの漬物を作る時には、古釘(くぎ)を入れたり焼きミョウバンをすり込んだりしますが、これは皮に含まれる色素を鮮やかに残すために工夫された調理法でした。ポリフェノールの存在について知られていなかった時代から、皮の色素を鮮やかに出すことがなすを美味しくいただく知恵と考えられていたようです。
また、賀茂なすを使った京都の伝統料理といえば、田楽や揚げだしがあります。どちらも高温の油で加熱することで、色素が安定して彩りよく仕上がり、皮まで柔らかくいただくことができます。
京都という土地で育まれた賀茂なすは、そこで生きる人々によって伝えられた食の知恵とともに、今も家庭のおばんざいや、料亭の味などには欠かせない食材として、大切に受け継がれています。皆さまもその味覚をぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。