冬から春にかけて出回り始める「八朔」は、甘さを競う柑橘類が主流の中でほどよい苦味とサクサクとした歯ごたえが特徴。広島県因島(いんのしま)のお寺で江戸時代に原木が発見され、全国に広まったという歴史があるそうです。皮にも豊かな香りや色素成分が含まれており、旬の時季、まるごと楽しみたい果実です。

八朔とは旧暦八月朔日(ついたち)のこと。しかし実際の収穫時期は12~1月ごろで、夏は実が小さく美味しくありません。発見したお寺の住職が、八朔のころから食べられるとして命名したと伝わりますが、本当の食べごろである初朔日(旧暦二月一日)が由来という説もあるようです。
真冬に収穫した八朔は、倉庫に貯蔵して、早春からの食べごろを待つのが一般的。「湿度を保ちながら2~3カ月寝かせることで、甘さと酸味のバランスが良くなり、香りも豊かになります」(JA広島果実連東京支所長 及川正明さん)

引き締まった果肉には、健康にも美容にも役立つビタミンCや元気を与えてくれるクエン酸が多く含まれています。特にビタミンCは1個食べれば1日の必要量を摂取できるほど豊富。
皮にも、気分をリフレッシュしてくれる香り成分や、健康、若々しさの維持に役立つ多様な成分が含まれていることが分かってきました。ヘルシーといわれる柑橘類の中でも、健康果実の優等生といえるでしょう。

旬の八朔の美味しさをひと言で表現すれば、「甘さと酸味にほろ苦さが重なり合った、通好みの味」(及川さん)。爽やかで複雑な味わいは、料理の素材に使っても存在感を発揮します。
果肉や果汁は魚のカルパッチョや酢飯に加えると美味。鶏肉や豚肉の料理にもよく合い、見た目にも春らしい彩りになります。また皮はマーマレードやピール(砂糖漬け)にしても良いですが、ドレッシングにすると重宝。春の食卓に、ぜひ取り入れてみませんか。