野菜の漬物でおなじみの「ぬか味噌」を使ってイワシやサバをやわらかく炊く「ぬか味噌炊き」は、北九州市小倉に江戸時代から伝わる郷土料理。
全国的に珍しいその調理法には、ぬかのちからを利用し、骨まで美味しく食べるための知恵が凝縮されています。

城下町として古い歴史をもつ小倉には、独特のぬか味噌文化があります。小倉では野菜のぬか味噌漬けを「床漬け」とも呼びますが、それは小倉藩主が信濃から持参したぬか床を大切にして、床の間に飾っていたためともいわれています。
以来、ぬか味噌漬けは小倉の郷土食として浸透。今なお手入れの良いぬか床を自慢する伝統が残っており、市の調査によると、ぬか床を所有する家庭は4割以上(※)。代々引き継がれてきた百年床を誇る家もあるほどです。
※平成17年北九州市市民意識調査「一般家庭のぬか床の保有状況」

ぬか味噌の原料であるぬかは、玄米の外側の部分で、タンパク質、ビタミンB群、ミネラル類や食物繊維、「γ(ガンマ)-オリザノール」というポリフェノールを多く含む栄養の宝庫。さらに、野菜を漬け込む間に良質の乳酸菌が加わります。
ぬかを利用した魚料理では、サバなどを漬け込む若狭地方の「へしこ」や、北海道の「ぬかサンマ」などがありますが、ぬか味噌で〝魚を炊く(煮る)〟のは小倉独自の食べ方です。

ぬか味噌炊きに使うイワシやサバは、必須脂肪酸のDHAやEPAを多く含むことで近年注目される食材。青魚は足が早く、DHAやEPAも酸化しやすいという弱点がありますが、ぬか味噌と合わせることで保存性が加わり、骨までやわらかく煮ることができ、ぬか味噌の成分も加わって栄養満点。食べてみると、ぬか味噌くささは一切なく、こっくりとした深みのある美味しさに、お酒やごはんが進みます。
各家庭では、山椒やしょうが、とうがらしなどを隠し味に使い、我が家の味に仕上げるとか。小倉で愛される伝統の味を、食卓に取り入れてみませんか。