
深海に生息する体長4~5cmの「桜えび」。水揚げされると、透明な身がすぐに美しい桜色になることからその名がつきました。世界でも稀少な生物で、国内では主に駿河湾だけで獲れる貴重品です。
漁が始まったのは明治27年で、漁師が誤って網を海底に沈めてしまい、引き上げたら大量の「桜えび」が入っていたという偶然がきっかけでした。富士川、大井川などの清流から注ぎ込むプランクトン、急に深くなる海底など、駿河湾は「桜えび」の生育に絶好の環境だったのです。
資源保護のため、漁期は3月からの春漁と、10月からの秋漁の年2回。由比港に水揚げされた「桜えび」は、鮮度が落ちないうちに素干しや釜揚げに加工されます。この時期、富士川の河川敷などで行われる天日干しは、桜色の絨毯を敷いたように美しく、季節の風物詩です。

干すことによって旨みが凝縮した素干しは、そのままはもちろん、かき揚げにしたり、様々な料理に使うことで、香ばしさと彩りを添えてくれる重宝な食材です。台所の名脇役ですが、この時期は、獲れたての「生桜えび」を味わえるのも大きな楽しみ。気になるヒゲは、器に入れて割り箸数本でかき回せば、簡単に取れるそうです。
プチンとした弾力と、口に広がる潮の香りと上品な甘みは、まさに旬ならではの旨さです。また、長ネギ、豆腐とともに、すき焼き風の出汁でさっと煮込んだ「沖あがり」もおすすめ。由比に伝わる漁師料理で、お酒にもごはんにもよく合います。

「桜えび」は、栄養的にも大変優れた健康食材です。カルシウム、鉄などのミネラル、EPAやDHA、タウリンなどが豊富に含まれており、しかも、ほとんどのエビは殻をむいて食べますが、「桜えび」は殻ごと食べられるので無駄がありません。
小さな体に驚くほどの栄養成分を秘めた「桜えび」を、毎日の食生活に取り入れてみませんか。