

高浜虚子の句碑が建つ、大分県日出町の暘谷城址。南側に広がる城下の海域に棲むマコガレイは、大変美味なことから、古来より「城下かれい」と呼ばれ珍重されてきました。
その味の秘密は、城下海岸近くの海底から湧き出す真水。海水と混じる汽水域には、藻類やプランクトンが多く発生し、そこで豊富な海藻類や藻エビを餌に成長する「城下かれい」は、形が丸々として上品な旨さになるといわれます。
ただ、獲れる海域は城下の二、三里に限られるため、江戸時代は庶民が食べることを許されず、別名「殿様魚」と呼ばれていました。また、日出藩が誇る将軍家への献上品で、天保年間の家老の日誌には、4年に1回うるう年の5月5日に間に合うように、生きた「城下かれい」を二百五十両という莫大な費用をかけて江戸へ運んでいたことが記されています。

現在でも稀少な高級魚である「城下かれい」の美味しさは、やはり刺身で味わうのが一番です。独特の甘味とコリコリとした食感は、昭和初期の木下謙次郎の名著『続美味求眞』※で、「香味優逸にして確かに魚膾の首位に推すべき値打がある」と評され、日本の名物料理八選のひとつに挙げられているほどです。
刺身は、ポン酢醤油にもみじおろし・きざみアサツキでいただきますが、肝や湯引きして刻んだ皮も、ぜひ一緒に味わいたいもの。特に肝は「得も云われぬ滋潤な風趣は、眞に天下の珍味」(『続美味求眞』)といわれ、ポン酢醤油に溶かせば刺身の旨さが倍増します。
小ぶりであれば煮付けがおすすめ。よく“マコガレイの旨さは煮付けにあり”といわれますが、身厚で臭みの少ない「城下かれい」は、ふっくらと煮付けると絶品です。
※『続美味求眞』…食通の貴族院議員による、味と料理の原典ともいえる随筆で、大正14年より発行された『美味求眞(全3巻)』の続編。

また「城下かれい」は、栄養的にもヘルシーな魚です。全身をくねらせて泳ぐため、脂肪が少なく、良質のたんぱく質やカルシウム、ビタミンB1・Eなどが豊富。そして、皮やエンガワには、肌などの健康に欠かせないコラーゲンが多く含まれています。煮付けにするとコラーゲンは溶け出すので、煮汁も煮こごりなどでどうぞ。
生でよし、煮ても焼いてもよし。旨さが増した旬の「城下かれい」を、殿様気分で味わってみませんか。

「城下かれい」が最も美味しくなる5月。地元の日出町では毎年、恒例の「城下かれい祭り」が開かれます。一番の目玉は、何といっても「城下かれい」を安価で味わえる「城下かれいミニ会席」。刺身、煮つけ、酢の物、吸物、ご飯のセットが2,500円(税込)とあって、全国からたくさんの観光客が訪れます。2007年は5月12日(土)・13日(日)に開催。この機会に本場の「城下かれい」を味わってみてはいかがでしょうか。

期間中は稚魚の放流などのイベントも行われます
●お問い合わせ:日出町商工観光課 0977-73-3158
取材協力・写真提供:日出町役場