
トマトはナス科の一年草です。原産地は南アメリカのアンデス高原といわれ、新大陸発見とともに、16世紀にヨーロッパへ伝わりました。
日本へは、中国を経由して伝わったといわれています。18世紀初頭の貝原益軒著『大和本草』には「唐ガキ」と紹介され、「実はホオズキより大にして」という記述が残されています。当初はもっぱら赤い実を観賞する植物でした。明治に入り、食用栽培も始まりますが、独特の臭みが敬遠され、急速に普及したのは食生活が洋風化した昭和に入ってからです。当時は酸味がきつかったため、砂糖をつけて食べられました。
トマトの品種は、ミニトマトや加工用のイタリア産トマトに代表される赤色系のものと、桃太郎に代表される、完熟しても色づきの浅い桃色系の2つに、大きく分けられます。今回は、桃太郎トマトの中でも、甘みと酸味の絶妙なバランスで評価が高い「南郷トマト」についてお聞きしました。

福島県の南西部にある南会津町は、周囲を帝釈山などの山に囲まれています。山間高冷地のため、暑い夏でも夜は涼しく、澄んだ空気ときれいな水に恵まれていることから、甘くみずみずしいトマトが育ちます。南郷トマトは、この南会津町と下郷町、只見町で栽培されています。名前は最初に栽培が始まった旧南郷村に由来します。
ここ南会津地域では桃太郎トマトの持つ高い糖度に酸味を加え、さらに味を濃くおいしくするために、うま味と酸味がつまった、種の周りのゼリー部分に注目。徹底した水やりの管理と、独自に製造した有機質肥料、堆肥による土づくりなどによって、ゼリーがぎっしりとつまったおいしいトマトづくりに成功しました。
また、トマトは冷してから出荷することで、鮮度を長持ちさせることができますが、この予冷に使用しているのが、冬に積もった雪を1000立方メートルも貯めた雪室。雪が溶ける時に出る天然の湿り気をおびた冷気が、トマトの果肉を引き締め、みずみずしさを保ちます。

ヨーロッパには「トマトが赤くなると医者が青くなる」という諺があるように、トマトは古くから薬効が認められてきた野菜です。体内でビタミンAに変わるβ‐カロテンやビタミンCが豊富で、カリウムやカルシウムなどのミネラルもバランスよく含まれています。赤い色のリコピンは、トマトの健康パワーとして、話題になりました。
トマトを購入する時は、新鮮な緑色のへたを持ち、全体に丸みを帯びた、ずっしりと重いものを選びましょう。旬の露地栽培のトマトは、とくに栄養価が高くなります。β‐カロテンもリコピンも油と一緒に摂ることで吸収力が高まるため、酸化されにくいオリーブオイルと一緒に調理したり、黒酢と調理するのがおすすめです。
おいしさと栄養がぎっしりつまったトマトを食べて、食欲の落ちやすい暑い夏も、元気にいきいきと過ごしましょう。
写真・資料提供:JA会津みなみ、福島県南会津農林事務所、南会津町南郷総合支所