
洋ナシは、16世紀頃からドイツ、イギリスで栽培され始め、日本には明治の初めに伝来。その後、代表的品種のバートレットが缶詰加工用を中心に盛んに栽培され、その実を結ぶ確立を高める受粉樹としてラ・フランスが植えられました。
ラ・フランスは1864年、フランスのクロード・ブランシュ氏が発見。あまりのおいしさに“我が国を代表するにふさわしい果物だ”と称えたのが「ラ・フランス」という名前の由来とされています。
日本には明治36年、山形県には大正初期に入りましたが、見た目が悪く栽培に手間がかかることから、受粉樹として栽培されてきました。それが昭和40年代頃から生フルーツの需要が高まり、生食用としてラ・フランスの真のおいしさが注目されることになりました。
別名「バターペア」とも呼ばれるラ・フランスは、特有の芳香と果汁がしたたる緻密な肉質を持つ洋ナシの最高峰。今月はラ・フランスの名産地として知られる山形県上山市を取材しました。

蔵王山麓にあり、自然に恵まれた山形盆地の中に位置する上山市。特産品であるラ・フランスのおいしさの秘密は、県内でもごく限られた産地でしか導入されていない「棚仕立て・無袋栽培」にあります。
棚仕立てとは針金などで平棚を張り、そこにラ・フランスの枝を丁寧に結び、一つひとつの果実に太陽が充分当たるようにした栽培法。自然仕立て栽培と比較すると面積当りの収穫量は減りますが、その分、太陽の光と栄養が行きわたり、大玉で濃厚な味になります。また、棚仕立て・無袋栽培のラ・フランスは表面がやや黄ばみ、サビ(日焼け)ができて美人ではありませんが、太陽の恵みがいっぱい詰まった高貴な香りと甘さが魅力の限定品です。
“くだもののかご”といわれ、さくらんぼやぶどう、干し柿などの産地としても知られる上山市では、9月上旬~中旬には、「全国かかし祭り」(2005年6月にサントリー地域文化賞を受賞)なども行われます。自然豊かな上山市で、秋を満喫するのもいいですね。

洋ナシと和ナシの栄養価はさほど変わらず、どちらもカリウムが比較的多く含まれます。旬のものを食するということは、その季節の体調を整えるという意味からも薬膳の基本とされています。約90%が水分でカリウムが豊富なナシは、利尿作用や体のほてりを冷ます作用があるため、残暑が厳しい頃にはぴったりです。そのほか、タンパク質分解酵素も含み、肉や魚の消化も助けます。
ラ・フランスをおいしく食べるには“食べ頃”の見分け方が重要です。ラ・フランスは、「予冷」「追熟」という特別の過程を経ておいしくなるため、常温(12~15℃)で、食べ頃になるまでゆっくりと待ちましょう。軸の周りを指で軽く押して、耳たぶぐらいの柔らかさになったら食べ頃です。
生でフレッシュなおいしさを楽しむほか、パイ生地に焼き込んだり、コンポートやジャムにしてアイスクリームなどに添えても上品なデザートに。また、ソテーして肉料理に付け合せてもいいですね。
旬のナシで夏の疲れを癒しつつ、味覚の秋を感じてみませんか。
写真資料提供:上山市役所/JAやまがた南部営農センター・上山市果樹部会西洋梨部