
アフガニスタン原産の人参は、トルコを経てヨーロッパに伝わった西洋種と、中国に伝わった東洋種の2種類に大別されます。
金時人参は東洋種で、16世紀末(江戸時代初期)に中国から日本に伝えられたとされています。色は深赤色、肉質はやわらかくて甘みに富み、香気が高く、他品種に比べて独特の味わいを持っています。
根が30センチほどと長く、割れが出やすいなど栽培が難しいため、1970年以降は収穫量が激減。現在では、長さ15~20センチで、根先が丸い西洋種の五寸人参などが日本では最も一般的な人参として一年中市場に出回っています。
金時人参は関西以西で広く栽培され、京都市では南区上鳥羽で古くから栽培されてきたため、伝統野菜に準じる京野菜と定義され、現在は山城町でも栽培されています。
今回は、その品質の高さから別名“京人参”と呼ばれる京都産の金時人参を上鳥羽で取材しました。

京都では千年以上にわたり、町衆はもちろん宮中や社寺等の多くの需要に支えられて野菜づくりが発展し、継承されてきました。京都の伝統野菜には独特の風味があり、野菜そのものの自然な甘みと香りの“濃さ”を味わうことができます。その多くは品種保存に努めながら、野菜本来の最も適した季節に、時間や手間暇をかけてじっくりと栽培されてきました。野菜の季節感が失われている昨今、京野菜はその季節にしか味わえない古いタイプの野菜なのです。
金時人参の京都市内の主な産地は南区上鳥羽ですが、豊かな水と土壌に恵まれた南区は、九条ねぎをはじめ古くから良質な野菜の産地として知られてきました。特に賀茂川と桂川に挟まれるように位置する上鳥羽は、平安時代からの河川の氾濫で、農作物に適した肥えた土を持つ地域。上鳥羽の金時人参は“京人参”の名にふさわしく、見事なまでの赤色で、煮てやわらかく、人参本来の甘みが味わえる、冬を代表する京野菜といえるでしょう。

一般的に人参はβ-カロテンを多く含み、ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富な健康野菜です。なかでも金時人参は、ビタミンやミネラルが特に豊富で、食物繊維やビタミンCは一般的な人参の2倍以上、葉酸は約4倍も含まれています。さらに、独特の真っ赤な色は、トマトと同じリコピンという色素によるもの。
人参の豊富なβ-カロテンは、皮の近くに一番含まれているため、料理の際には皮のまま用いるか、皮をむく場合はできるだけ薄くむくこと。皮は千切りにし、きんぴらか炒め物に使いましょう。また、軸の切り口が太いものは芯が太くてかたいので避けましょう。
京都をはじめ関西では、お正月のお煮しめや雑煮、粕汁、おなますなどには、金時人参が登場します。やわらかいのに煮崩れせず、きめ細やかで甘みが強い金時人参。この冬は、色鮮やかな“金時人参”の香り高い風味と野菜本来の甘みを堪能してみませんか?
写真・資料提供:京都市産業観光局農林振興室、上鳥羽産京野菜のホームページ