
三好典座の下には、
食事の支度をする修行僧たちが
10名ほどいます。
彼らが最初に教わることは、ごまのすり方。
毎朝1時間以上かけて黙々と、
修行僧200人分のごまをすります。
「急げば油が出るし、
一度にたくさんだと均等にすれません。
少しずつていねいに。そうでないと、
おいしいごま塩にはなりません」
精進料理というと、
粗食に耐える苦行のように
思われがちですが、
素材を大切にして
おいしく作った料理で心身を養わなければ、
修行には集中できないと、
三好典座はおっしゃいます。
大きなすり鉢に、ごく少量ずつのごまを、ゆっくりとていねいに、数回に分けてする。そうすることで、一粒一粒が均等になり、油分が滲み出るのを防ぎ、旨みや栄養も吸収されやすくなるという。永平寺では、朝粥とともに大さじ2杯強のごま塩が出される。朝の胃にやさしく、一日の原動力となる栄養がたっぷり摂れるという。

『典座教訓』には
「材料を無駄にしたり差別をしてはならない」
と書かれています。
三好典座は、
それも料理をおいしくするための教えだと
解釈されています。
たとえば、野菜の皮や芯。
普通は捨ててしまう部分ですが、
じつは旨みや栄養が
とても豊富に含まれています。
「大根の皮やかぼちゃの種からは、
よいだしがとれます。
大根の葉は青みや菜飯に使えますし、
キャベツの芯は味噌汁に入れると
おいしいですよ」
200人分の食事を作っても、
生ごみはほとんど出ない調理法。
食材の本当のおいしさを知ることで、
ごく自然に、環境にやさしい生活が
760年以上も前から営まれています。
野菜の皮は、もっとも旨みが凝縮されている。むいた皮は、まとめて麻袋に入れて、汁物や煮物のだしに使う。
給仕係の修行僧が、できあがった食事を合掌しながら受け取る。昼食の主食となる麦飯は、昨今の麦の高騰により、その確保が難しくなってきたという。
朝食に欠かせない
ごま塩。一度に、1リットル瓶3本分を使う。ごまと塩の割合はおよそ8対2と薄味。
200余名の三食すべて、三好典座以下、10名の修行僧が支度する。早朝3時(夏は1時半)から就寝の9時まで、厨房からほとんど離れることはない。