桃山アヴァンギャルド ー織部の大成ー

“へうげ”の気風に満ちた、破格の美

桃山時代の茶の湯文化が育んだ、個性的なやきもの。
今回は、斬新でかっこいい!とファンの多い「織部」をご紹介しましょう。
開放的で大胆!こうしたデザインを「破格の造形」といいます。
斬新に組み合わされた文様や、ぐにゃりと歪められた非対称なうつわなど、「織部」は「へうげ=ひょうきんの意」と呼ばれ、人気を集めました。桃山の自由闊達な時代背景を反映した作品が続々と生まれたのです。

志野と並ぶ美濃焼のブランドのひとつ、「織部」には、前回のコラムでご紹介した「志野」で開発された「絵付け」や「鼠志野」の技法が取り入れられています。

自由で豪快な組み合わせ!

ご覧いただいているのは「織部四方蓋物」。四角い
蓋つきのうつわです。緑と白の釉薬を全体にかけ分
け、白い釉薬の上に模様が描かれた、ダイナミック
なデザインが印象的ですね。
丸を連ねた模様や、格子の中に黒点が並ぶ模様は、
鉄絵の「絵付け」です。
一方、黒地に白い縞の模様は、「鼠志野」。白い釉薬
の上を鉄絵で黒く塗りつぶして、そのあと掻き落と
して、白い文様を表しています。蓋の形にもご注目。
よく見ると、端の部分が少し浮き上がっていますね。
「使い勝手」よりも「破格の造形」を極めた結果な
のでしょう。

ここで、やきもの通に近づく「目利きワード」を交
えながら、さらにデザインを読み解きましょう。

遊び心あふれる模様のコラージュ

蓋をあけると、表の幾何学模様とはうってかわって、おおらかな雰囲気の内側。

それでは蓋をあけてみましょう。表の幾何学模様からうってかわって、おおらかな雰囲気ですね。
左下は橋、右上は蛇籠(じゃかご)のよう。蛇籠とは、筒型の竹籠などに石を詰めたもので河川工事に使いますが、魔除け道具ともなりました。橋は「絵付け」、蛇籠は「鼠志野」です。ひとつのやきものの中で、蓋から見込みまで、白黒が繰り返し反転しているんですね。

ところで、このやきもの、どうやって形を作ったと思いますか?
まずは「土づくり」。「菊練り」といって、空気を抜くように根気よく練ります。

土づくり。「菊練り」
形づくり。「手びねり」「ひもづくり」「たたらづくり」「ろくろづくり」

それから、「形づくり」。次の4つの方法があります。

・ 土のかたまりを指でのばしながら形を作る「手びねり」
・ ひも状にした土をぐるぐると積み上げる「ひもづくり」
・ 板状にした土を立体的に組み立てる「たたらづくり」
・ 轆轤(ろくろ)を使って回しながら成形する「ろくろづくり」

箱型のやきものは通常、「板づくり」ですが、先ほどの織部のやきものはどうやら違うようです。なぜなら、底の真ん中あたりに、渦状の凹凸が見えるから。この凹凸は、轆轤をまわしながら土を伸ばした時の中心、「轆轤目(ろくろめ)」かもしれないのです。だとすると、轆轤で円形にのばしてから、端を四角く切って立ち上げたということになります。

織部にも南蛮ブームが到来!桃山時代、ポルトガルやスペインの船が日本に西洋の文化や品物を伝えました。彼らは南蛮人と呼ばれ、大名から庶民にいたるまで、一大南蛮ブームが巻き起こりました。こちらは、ずばり南蛮人をモデルにしたロウソク台。ユーモラスでかわいいですね。眉毛は太くつながり、口ひげも生えています。彫の深い顔立ちは、いかにも南蛮人という雰囲気。足元の引き出しには燃えさしや切った芯を入れておくことができます。よく考えられていますね!

のびやかな線と奥深い釉の共鳴

先ほどご紹介した「織部四方蓋物」は、緑と白に塗
り分けられた「青織部」。一方、こちらの「織部鷺
文輪花皿」は緑一色の「総織部」です。サギの文様
が勢いよく彫られ、釉薬のムラが良い表情です。
織部を象徴する「緑」は、当時、中国南部からもた
らされたやきもの、華南三彩の緑色の影響ともいわ
れています。
織部にはほかにも、真っ黒の「黒織部」や、素地に
赤土を使った 「赤織部」、緑と灰色で片身替にした
「鳴海織部」と呼ばれるものもあるんですよ。志野
に至るまでに開発されてきたさまざまな技や釉薬を
巧みに組み合わせることで、破格の美が生まれたの
ですね。

銅緑釉の濃淡がとっても美しい!釉薬のムラが良い表情です。

織部にも南蛮ブームが到来!

太い眉に高い鼻。南蛮人がモデルのロウソク台

桃山時代、ポルトガルやスペインの船が日本に西洋の文化や品物を伝えました。彼らは南蛮人と呼ばれ、大名から庶民にいたるまで、一大南蛮ブームが巻き起こりました。
こちらは、ずばり南蛮人をモデルにしたロウソク台。ユーモラスでかわいいですね。眉毛は太くつながり、口ひげも生えています。彫の深い顔立ちは、いかにも南蛮人という雰囲気。足元の引き出しには燃えさしや切った芯を入れておくことができます。よく考えられていますね!

織部は、桃山時代、流行最先端のやきものでした。少しでも斬新なものを作り出そう、
伝統から飛び出そうという気概が伝わってきますね。

次回は、江戸時代の京都にひとっとび。はんなりと上品で華やかな京焼をご紹介します。

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