サントリーホールの落成記念コンサート(1986年)以来、長きにわたりサントリーホールで演奏してきた清水和音さん。
20歳でパリのロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門で優勝、同時にリサイタル賞を受賞し鮮烈なデビューを飾った清水和音(かずね)さん。以来30年以上第一線を走る清水さんに、「コンクール」とはどんな存在なのか聞いてみました。
「コンクールは、音楽とはなじまないと思っています。芸術は競争じゃない」。音楽教育にも携ってきた清水さんは、若い世代、とくに子どものコンクール参加に異を唱えます。「〇〇ちゃんよりいい点だった、ということがその子の音楽の基準になってしまったら、それだけで小さな人間を作ってしまう。音楽に勝ち負けの意識が刷り込まれるのはもったいないことです」。
現在ほど手軽に情報が入手できなかった昔、コンクールは世界中に散らばるまれな才能を見つけ出す手段として、一定の役割を担っていました。しかしグローバル化が進んだ今、「コンクールの本来の役割は終わったのでは」と清水さんは言います。
では音楽家にとって、コンクールとは・・・? 「僕自身は、コンクールで優勝したことで仕事がたくさん舞い込んできて、それはありがたいことでしたよ(笑)。でも、商業的な成功と、音楽家としての成功は別物です。大事なのは自分が音楽家としてどうあるべきかであって、他人の評価ではないのです」。それを理解した上で、チャンスを広げるちょっとした“スパイス”にコンクールを活用してほしい、と音楽家の卵たちには伝えているのだそう。
より多くの人に、平等にチャンスを与える機会だったコンクール。しかし情報伝達の手段も増えた今、コンクールは新しい役割を模索する時期に来ているのかもしれませんね。