サントリーホール正面玄関の上壁に仕込まれたパイプオルゴール。正午と開場時に音楽が奏でられる。
しかしそんなスイスを、オルゴール生産量で日本が追い越すことになります。文明開化に沸く明治時代、スイス製のオルゴールが外交官や財閥一族などの間で人気を博しましたが、国産オルゴールの登場は1948年(昭和23年)まで待たなくてはなりませんでした。
本場スイスからの技術指導はかなわず、独自の研究と試行錯誤が続き、戦後の復興ムードのなか製造技術の向上と市場拡大のための商品開発が行われました。その甲斐あって、駐留米軍がお土産に買い求める寄木細工や漆塗りの箱にオルゴールを取り付けたものなどが徐々に売れ始めたり、外国人の手によって日本から持ち込まれた小さな箱型のオルゴールがアメリカの大手バイヤーの目に留まり、スイス製に比べて安価で質も良い日本製オルゴールは注目され、輸出も始まりました。
1960年代、アメリカの玩具メーカーから年間契約が入るようになってからは、スイスの総生産量を超え、日本が世界トップのオルゴール生産国となったのでした。
時を告げる鐘から生まれたオルゴール。時代によって音楽環境は変わっていきますが、生活のなかに息づくオルゴールの音色は、これからもなくならないでほしいですね。
サントリーホールの正面玄関にも、パイプオルゴールが仕込まれているのをご存じですか? 正午と開場時には壁が開いて、ぶどう畑の番人と少年の人形がオルゴールを回します(年4回、楽曲は季節によって変わります)。都会のなかで味わえるほっとできるひとときを、ぜひ一度体験してみてください。