リストの美しい横顔と情熱的な演奏は19世紀の上流階級婦人たちを失神させた。
ナルシス(ギリシア神話ナルキッソス)のような端正な顔立ちに、強い輝きを宿した瞳。美しくも難解な曲を長い指でアグレッシブに演奏し、時には演奏中のピアノを壊してしまうこともあったとか。その情熱的な姿にヨーロッパ中の婦人たちが魅了されました。当時のリスト人気を語る逸話は数多くあります。風呂の残り湯を盗まれたり、飲み残した紅茶をファンが香水瓶に入れて持ち歩いたり…旅立つ彼を見送るために楽団付きの大型汽船をチャーターし、“追っかけ”に興じる婦人たちもいたほどでした。
20代前半で伯爵夫人と逃避行、喧噪から離れつかの間の静寂を手にしたリストは作曲活動にも打ち込みます。音楽の転機となったのは36歳のとき。「演奏旅行に疲れた」リストは、ワイマール宮廷楽団の楽長に落ち着きオーケストラを率い、指揮者としても活躍しました。